ディスクの受け渡しは意識的に作る必要がありますが、その一方で、なんとなくルーティンができてしまうことから犬まかせになりやすい競技ともいえます。
そのことを端的に示す事例があります。
多くのプレイヤーが、プレイ中にディスクを追いかける犬に対して指示を出しますが、大会に出られるレベルの犬であれば、指示を出さなくとも十中八九ルーティンをこなします。(※指示を出すことに意味がないということではありません)
なぜなら、ディスク競技は、一連の行動そのものがご褒美の連続で成り立っている競技だからです。(プレマックの原理といいます)
そのため、ディスク競技を続けられる犬たちは、多くの場合ディスクジャンキーになります。
その一方で、ディスク競技にはちょっとした落とし穴があります。
投げたディスクをキャッチして持って帰ってきてもらうことはプレイヤーにとっては一大事ですが、犬にとってキャッチしたかどうかは、プレイヤーほど大事なことではないと考えられます。
なぜなら、ディスクそのものがご褒美であり、一連のルーティンそのものがご褒美の連続で成り立っているからです。
ちなみに、犬がキャッチできなかった時にプレイヤーから見て犬がネガティブな反応を見せた場合、キャッチできなかったという場の状況とプレイヤーの発するネガティブな感情とが結びついてしまっているためです。
ここで重要なのは、逆もまた真なりということです。
競技の性格を考えれば、全投キャッチを目指すのは当然のことと言えます。
そのため、キャッチ率を上げるために多くのディスクを犬に投げたくなるのも人情としては分かります。
犬とは違い、プレイヤーにとっては犬がキャッチすることが最大のご褒美だからです。
結果、練習熱心であればあるほど失敗の数も多くなり、成功との差異なくディスクを投げてもらえるとなれば、練習すればするほどキャッチ率が上がらないというような状態に陥る可能性もあるのです。
始めたばかりのプレイヤーの場合、まずはきちんと投げられるようになることが一つの壁と言えるでしょう。
その一方で、距離も短くどこへ飛んでいくのか分からないディスクに対して、犬は集中力を持って対応してくれます。(犬にとってはご褒美の出所がギャンブルなので楽しい)
ところが、競技全体をうまくこなすことができるようになるにつれ、より遠くへ正確に投げられるようになるにつれ犬のキャッチ率が下がってしまう場合があります。
プレイヤーの練習量に裏打ちされた安定した軌道が犬の行動予測を誘発すると同時に、距離が遠くなればなるほどプレイヤーも犬も失敗しやすくなるからです。
ドッグスポーツは得てしてお金がかかります。
競技に参加しても結果が得られないとモチベーションは低下するのは仕方がないと言えるでしょう。
何を目標とするかによりますが、勝つことよりも失敗しないことが重要です。
プレイヤーの勝ちたい気持ちは大切ですが、ディスクドッグの育成において、プレイヤーの視点としての失敗は、ボディブローのように後からずっしり効いてきます。
これは、経験者だから言えることでもあります。
これまで述べたことは、ディスク競技で出やすい問題の一つですが、問題の根源はルーティンのあらゆるところに潜んでいます。
他のドッグスポーツよりも犬まかせになりやすい点で、とてもシンプルで簡単な競技であるにも関わらず、それゆえとても奥が深いのです。
だからこそ、これから始めたい人、大会に出てみたいと考えている人、大会に参加しているけどうまくいかない人を行動学の視点から全力でサポートしていきます。